2017年3月16日木曜日

アブラナ科野菜類のワックス成分の 除去と殺菌効果の助長について


アブラナ科野菜の水はじきと界面活性剤

アブラナ科の野菜類や(キャベツ、ブロッコリー、水菜等)、パクチー、大麦若葉等の野菜類は、ロウ質であるワックス成分(ワックスブルーム)を生成する事で、乾燥や低温や太陽光線(直射日光)、更には害虫等からその身を守っています。そのため、このロウ質によって、野菜表面の水はじきが強くなるという特徴を持ち、洗浄効果や殺菌効果が得られづらく、このことがカット野菜を加工する上での課題の一つとして挙げられます。しかし、これら野菜類を加工する上で、中性洗剤を用いて洗浄することで虫を取り、汚れを除去していますが、この中性洗剤を構成している界面活性剤には、水になじむ成分(親水基)と、油になじむ成分(親油基または疎水基)があり、この成分によって4つに分類されます。
<図1>そして、このアブラナ科の野菜類を殺菌するためには、この表面に付着しているワックス成分を除去し、水はじきを解消しなければ如何なる殺菌剤の効果も半減してしまいます。では、どのような洗剤を使用すれば殺菌しやすくなるのでしょうか?そこで色々と調べてみましたが、そのような角度で検証されたデータはなく、また知見も少なく、アブラナ科野菜類を殺菌するために適している前処理洗浄剤を、野菜表面に付着している微生物を除去し、殺菌するという観点から検証されたことは、どうも無いようです。そこで、この度この観点に立って検証試験を実施してみる事にしました。


市販洗剤に見る界面活性剤の配合割合
市販で購入できる家庭用洗剤を例に取りますと、複数の界面活性剤が配合されており、これらの用途は主として食器洗いであり、泡立ちの良いアニオン系のものから、昨今では泡切れを調整することができ、水質に左右されないノニオン系の配合比率が高まっているようです。その中でも代表的な市販洗剤<図2>の洗浄効果と殺菌効果を検証してみることにしました。
まず、各市販洗剤の特徴を確認するために、ラー油とごま油を混ぜ合わせたものを水に浮かべてから、ここに市販洗剤を滴下させますと油の乳化・分散・可溶化を比較することができます。そこで、この性質を用いてその効果を確認してみましたところ、以下<図3>のようになり、市販洗剤によっても、各種界面活性剤の組み合わせによっても、その効果が異なるということがわかりました。
また、この市販洗剤の中には、野菜・果実を洗浄(5分間)するという使用方法が用途として記されていないものもありますが、アブラナ科のようなワックス成分で覆われた野菜類を洗浄し、その後殺菌するとした場合、どのタイプの界面活性剤を用いて前処理した方が良いのかを確認してみる為に、4つの市販洗剤を用いて、水菜(アブラナ科)を洗浄してみました。
























水菜(アブラナ科)における洗浄と殺菌効果
水菜はカット野菜の中でも常在菌数が高く、しかも水はじきが強いため、殺菌しづらい野菜類の1つですが、前述の4つの市販洗剤を用いて5分間洗浄し、その後殺菌処理した後の菌数を確認してみましたところ<図4>、市販洗剤による洗浄後の菌数差はさほど無く、その後、殺菌処理を施しますと、菌数結果に違いが見られ、C社から発売されています、製品3、製品4では、一般生菌数、大腸菌群数ともに、殺菌効果が明確にみられています。
また、殺菌直後の水菜中の残留塩素を測定してみましたところ、水道水で洗浄したものと、各種市販洗剤で処理したものとの間には大きな差は見られず<図5>この事は、洗浄することでワックス成分が除去され、水菜に殺菌液の有効成分が浸透したからではなく、表面のワックス成分を除去することで、水菜の水はじきが無くなり、水菜の表面にのみ付着している微生物に対する殺菌効果が強まったからではないかと考えられ、やはり水菜の常在細菌の多くは表面に付着しているという事がわかりました。


まとめ
水菜、キャベツなどのアブラナ科の野菜の表面にはワックス成分があり、洗浄水や殺菌剤を自らはじいてしまうことでその殺菌効果が得られづらいという特徴があります。
そこで、これらアブラナ科の野菜類のワックス成分を除去する為には、実際には洗剤で前処理した方が良いのかどうかを、一般的によく知られている家庭用の洗剤を用いて確認してみました。
その結果、前処理洗浄はとても効果的であるということがわかり、また、この前処理に用いる洗剤としましては、アニオン系の界面活性剤100%で構成されている製品が最も効果的であり、次に、アニオン系の界面活性剤の配合量が多い製品の結果が良く、アニオン系の配合量が多い洗剤の方が殺菌助長効果が強い様です。
ただしその一方で、ノニオン系を中心とした泡切れの良さを特徴としている製品の方は、ワックス成分除去効果も、殺菌助長効果も得られづらいという事がわかりました。しかし、アニオン系の配合が多すぎますと、泡立ちが強く、洗剤成分を洗い流すための水洗い回数が多くなり、手間が増える可能性があり、カット野菜工場の自動洗浄ラインでは泡が残り、作業性が悪化する懸念があります。
以上のことから、レタス等は、野菜表面にワックス成分が少ないので、虫取り程度の軽度の洗浄で良く、泡立ちが少ないノニオン系の洗剤で処理してもなんら問題はありません。しかしながら、アブラナ科の野菜類や、水をはじきやすい野菜類や、浸透性の悪い野菜類の場合には、アニオン系を中心としながらノニオン系の界面活性剤をバランス良く配合し、ワックス成分の除去と、現場での泡切れの良さの両面に配慮している洗剤を用いなければ、これら野菜類に付着している微生物類を効率よく除去し、殺菌する事はできないという事なのです。
そして、これらの野菜類を処理する場合には、前処理洗浄はとても重要であり、泡切れの良さを求めるだけでなく、古典的ではありますが、アニオン系の効果を中心とし、ノニオン系の界面活性剤がバランス良く配合されている洗剤で前処理しておくことこそ、この後、殺菌しやすくなるという、とても賢い使い方だという事がわかりました。是非皆様も試してみて下さい。

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