2017年2月6日月曜日

弁当、そうざいの衛生規範から見る未加熱食品のトッピング事例と衛生規格



加熱済み食品と未加熱食品を組み合わせた食品の衛生規格について

ノロウイルスなどの食中毒事故が増加の一途を辿っておりますが、特に生野菜については、未加熱のため食中毒が発生しやすく、昨年末に厚生労働省は老人ホームにおける未加熱野菜の提供の場合、塩素殺菌を徹底するようにと指導したばかりです。
また、この未加熱野菜であるサラダについては、ここ数年前からサラダ単体で流通するというだけではなく、弁当やそうざい等にトッピングされるケースが多くなり、未加熱野菜由来の食中毒の危険性そのものは高まる一方であり、生野菜に対する殺菌処理の重要性は増しているといえます。
しかし生野菜の場合、単独の衛生規範や規格は存在しておらず、厚生労働省が定める弁当、そうざいの衛生規範の中にあります「サラダ、生野菜等の未加熱処理」という項目に規格が存在しているだけです。
過去には東京都などの自治体にも衛生規範や衛生規格が存在していましたが、厚生労働省の食品衛生法で定められていることから廃止され、統一化されてしまいました。なお、この弁当、そうざいの衛生規範には〈図1〉のように定められており、未加熱野菜は、一般細菌数が100万個/g以下という規格が存在しているだけです。(加熱済みは、10万個/g以下、E.Coli(糞便系大腸菌群)陰性であり、規格が厳しく管理されている)


しかし、今日の商品形態は流通の向上によってチルド化し、様々な形態を取る様に変化して(進化して)おり、衛生規範を設定した当初は予想もしていなかったような商品が数多く作られ、販売される様になりました。
食品製造業においても、加熱済みと未加熱野菜を組み合わせた場合の微生物規格がどのようになっているのかはあまり知られていません。
そこで、以下について東京都内のある保健所に確認してみました。(但し、自治体によって判断は異なる可能性があるとのこと)

<ケース1>
パスタや揚げ物などの加熱済みそうざいの上に、生野菜をトッピングした場合
⇒最終製品で判断。未加熱そうざいになる。

<ケース2>
上記の場合でフィルム・トレー等で区分けした場合、またはトッピング量が少ない場合
⇒トッピング量で変更無し。トレー等で区分けしても生野菜をトッピングした場合、全て未加熱そうざいになる。

<ケース3>
生めんは、めん類の衛生規範が別途あるが、生野菜をトッピングした場合
⇒全て未加熱そうざいになる。

つまり、食中毒防止の観点ではあまり良いとは言えませんが、生野菜をトッピングした場合、微生物規格がゆるくなるということになります。これは生野菜には微生物類が多く付着していて当たり前だという過去の慣例も影響しているのではないでしょうか?
その一方で、日本生活共同組合連合会では、未加熱野菜であっても、次のような微生物規格を設けており、消費者への食の安心と安全を考慮していることが伺えます。〈図2〉


生野菜に使用できる塩素系殺菌剤について
未加熱の代表である生野菜については、ノロウイルス食中毒の増加から、厚生労働省でも塩素殺菌を推奨しておりますが、現時点(2017.01)で生野菜を殺菌処理することが認められている食品添加物としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸水、高度サラシ粉、亜塩素酸水、亜塩素酸ナトリウムの5剤がその使用を認可されています。〈図3〉
なお、食肉、食肉製品に使用する亜塩素酸ナトリウムには使用制限があり、pH2.3~2.9に調整した亜塩素酸ナトリウムの浸漬液を30秒以内で使用し、最終製品完成前に分解し、除去すること。という調整条件と使用条件が付随しております。また、この薬液条件は他の食品では使用できません。

にも関わらず、近年漬物業者が、原料野菜の殺菌を目的として、この亜塩素酸ナトリウムを使用し、漬物を加工したところ、使用基準違反で商品回収された事例もあります。よって、これらの使用基準は、あくまでも最終製品で判断されるということにも留意する必要があると言えます。

次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸水、亜塩素酸水、亜塩素酸ナトリウムには使用基準が設定されています。

まとめ
ノロウイルスやカンピロバクター属菌による食中毒は増加の一途をたどっておりますが、生野菜を加熱済み食品にトッピングしますと、その最終食品は未加熱処理品とみなされ、微生物規格が緩和します。そこで、厚生労働省が定める弁当、そうざいの衛生規範を遵守するだけではなく、各社が食の安心・安全を考慮し、独自の微生物規格を設けたり、未加熱食材を、加熱食品とは区別して、それぞれ別々の微生物基準を設定し、それに従い検査し、管理する等、常に衛生的な食品を提供できる体制を整えなければならないのではないでしょうか?
しかも、消費者ニーズは多様化し、食品の多様化も進んでいます。よって、このなケースでも、食品製造メーカーにとって自主管理基準はより一層、重要な防御体制になるのではないでしょうか?ただし、法規というものは、後から追いついてくるものであります。食中毒事故を未然に防ぐ為にも、食品の衛生管理は、より慎重に進めなければならないはずです。特に未加熱野菜だけでは微生物類の増殖は緩やかでありますが、タンパク質や炭水化物に、この未加熱野菜由来の微生物が付着してしまいますと、急激に増殖します。この事から考えましても、一般生菌数だけの管理ではなく、E.coli(Escherichia coli)の自主検査を欠かさず実施し、管理されるべきではないでしょうか?

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