2017年8月24日木曜日

ノロウイルス食中毒・感染性胃腸炎について




ノロウイルスによる集団感染
2017年8月4日~13日の10日間の日程でイギリスのロンドンでは、世界陸上競技選手権大会が開催されており、連日テレビで中継されていますが、この大会中に、各国の選手団が宿泊している公式ホテルの一つで、胃腸炎などの体調不良者が続出し、症状を訴えている人々は、約50名にものぼり、そのうち数名からノロウイルスが確認されているという報告がありました。

ノロウイルスについて
ノロウイルスとは、遺伝子として一本鎖RNAを持ち、エンベローブを有さないRNAウイルスであり、このノロウイルスを起因とする食中毒や感染性胃腸炎は、一年を通して発生し、特に冬季(10月~3月)に多発しています。尚、ノロウイルスは人の手指や食品を介して経口で感染し、ヒトの腸内で増殖します。症状としては、おう吐、下痢、腹痛などを引き起こし、健康な人であれば、2~3日で快方に向かいますが、子供や高齢者などでは重篤化したり、吐物を気道に詰まらせて死亡する事もあります。又、ノロウイルスはワクチンがなく、治療方法も輸血などの対症療法に限られているのが実情です。
ノロウイルスは感染後、凡そ1~2日の潜伏期の後に発症し、2~3日で回復に向かいますが、小児では3週間以上、成人では2~3週間に渡り、糞便にはこのノロウイルスが潜伏したままの状態で排出されます。
尚、摂取してから、15時間後には発症前であっても感染した人の糞便に含まれているノロウイルスが排出され始め、摂取後1~3日後にこの排出のピークが見られると言われています。しかも、無症候性保菌者も多く、十分な注意が必要です。


食中毒と感染性胃腸炎の違い
ノロウイルスによる「食中毒」と「感染性胃腸炎」の違いは、どちらもノロウイルスに感染した事を意味していますが、関係する法律の定義の違いによって分類されています。
尚、その取り扱いについては、ウイルスに汚染された食品を摂取する場合には「食中毒」、それ以外の原因で発症したものは「感染性胃腸炎」として扱われます。

まとめ
ノロウイルスを起因とする食中毒や感染症は、毎年、拡大傾向にあり、その対策として、厚生労働省におきましても、平成28年度には、国立医薬品食品衛生研究所において作成された「ノロウイルスの不活化条件に関する調査報告書(平成27年度)」を参考資料として、「大量調理施設衛生管理マニュアル」を改定し、この際、調理機械、調理台、調理器具類などは、ノロウイルスに対する不活化効果を期待することが出来る薬剤を選定し使用することや、十分な洗浄が困難な器具類については、有機物存在下でも不活化効果を期待することが出来る、亜塩素酸水又は次亜塩素酸ナトリウム等で浸漬処理し、消毒すること。と明確に記されており、つい先月も、このノロウイルス対策に係る項目が新たに追加・変更され、食品に携わる施設や調理従業者に対する衛生管理の強化と、その徹底が指導されています。
 尚、2020年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会も控えており、今回、イギリスで開催された世界陸上競技大会で発生したノロウイルスによる集団感染のような事態を引き起こさない為にも、更なる強化が図られるであろうと予測されます。
そしてまた今年度も、このノロウイルスの流行シーズンが近づいてきています。貴施設の日頃の衛生管理方法や、緊急時の対応方法を、今一度見直され、ノロウイルスを起因とした食中毒や感染症を発生させない管理体制を、これまで以上に、強化された方が良いのではないでしょうか?







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「大量調理施設衛生管理マニュアル(平成29年6月16日付)」の改正について





平成29年06月16日付けで「大量調理施設衛生管理マニュアル」が改正されました。
本マニュアルについては、平成28年07月にも、ノロウイルス食中毒事故に対する措置案として大幅な改正が行われましたが、先般の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会において、平成28年度の食中毒発生状況を踏まえ、ノロウイルス対策並びに腸管出血性大腸菌対策に関する議論がなされ、調理従業者等の健康状態の確認に関する重要性が指摘された事によって、新しく改正されることになりました。

今回改正された背景
平成28年度に東京都及び千葉県の老人ホームにおいて合計10名が死亡する腸管出血性大腸菌O-157による食中毒が発生し、関係自治体による調査の結果、未加熱の野菜調理品(きゅうりのゆかり和え)が原因食品であると判明し、この事により、高齢者や若齢者等の抵抗力が弱い方々に、野菜及び果物を加熱せず提供する場合には(表皮を除去する場合を除く。)殺菌処理を施す必要があると定められました。
また、平成29年02月に、きざみのりを原因食品とする大規模なノロウイルス食中毒が発生し、乾物や摂取量が少ない食品も含めて、製造加工業者には、調理従事者の健康状態の問診確認と、その記録の保管に関するノロウイルス対策を適切に行う事が定められました。

主な改正箇所について
今回の改正によって、本マニュアル内に新たに追記もしくは変更された箇所としましては、大きく「原材料の受入れ・下処理段階における管理」に係る改正と、「調理従業者の衛生管理」に係る改正であります。

【原材料の受入れ・下処理段階における管理に係る改正】
①「加熱せずに喫食する食品(乾物や摂取量が少ない食品を含む)を原材料として、受入れる場合は、製造加工業者の衛生管理体制を確認すること。特にノロウイルス対策を適切に行っているのかを確認すること。」と新たに明記されました。

②「高齢者、若齢者及び抵抗力の弱い物を対象とした食事を提供する施設で、野菜及び果物を加熱せずに供する場合(表皮を除去する場合を除く)殺菌すること。」と対象施設が新たに明記されました。

【調理従業者等の衛生管理に係る改正】
①「調理従業者等は、毎日作業開始前に、自らの健康状態を衛生管理者に報告し、衛生管理者はその結果を報告すること。」と新たに明記されました。

②「調理従業者等は臨時従業員も含め、10月から3月までの間には、月に1回以上、又は必要に応じてノロウイルスの検便検査に努めること。」と新たに検便の期間と頻度が明記されました。

③「ノロウイルスの無症状病原体保有者である事が判明した調理従業者は、検便検査においてノロウイルスを保有していない事が確認されるまでの間、食品に直接触れる調理作業を控えるなど適切な措置を取ることが望ましいこと。」と新たに発病に至らない感染が判明した場合の対応が明記されました。

④「これまでノロウイルスの検査に当たっては、リアルタイムPCR法等の高感度の検便検査を実施し、保有の有無を確認する事」とされていましたが、「遺伝子型によらず、概ね1g当たり105オーダーのノロウイルスを検出出来る検査法を用いる事が望ましい。」と変更になりました。


「大量調理施設衛生管理マニュアル」に記載されている野菜・果物の殺菌洗浄方法」
現在、「大量調理施設衛生管理マニュアル」(別添2:標準作業書)(原材料等の保管管理マニュアル)で記載されている野菜・果物の殺菌洗浄方法と、殺菌時に使用することが出来る薬剤は表の通りであります。

【処理方法】
①流水で3回以上水洗いする。
②必要に応じて、次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌※した後、流水で十分水洗いする。
③水切りする。
④専用のまな板、包丁でカットする。
⑤清潔な容器に入れる。
⑥清潔なシートで覆い(容器がふた付の場合は除く)、調理まで30分以上を要する場合には、10℃以下で冷蔵保存する。
※水洗い前の工程は省略しています。

【殺菌で使用可能な薬剤】
・次亜塩素酸ナトリウム溶液 (200mg/ℓで5分間又は100mg/ℓで10分間)
・亜塩素酸水(きのこ類を除く)
・亜塩素酸ナトリウム溶液(生食用野菜に限る)
・過酢酸製剤
・次亜塩素酸水
・食品添加物として使用出来る有機酸溶液
※これらを使用する場合、食品衛生法で規定する「食品、添加物の規格基準」を遵守すること。

 
まとめ
「大量調理施設衛生管理マニュアル」は、同一メニューを1回300食以上または1日750食以上を提供する大量調理施設に適用される規定ですが、それ以外の中規模、小規模の調理施設でも、また、加熱せずに喫食することを前提にしているカット野菜やカット果物等を加工する施設においても、また他にも、生野菜を原料とする浅漬け等、漬物類を製造・加工している施設でも、同マニュアルの趣旨を踏まえた上で衛生状態を管理するように指導されています。
 従いまして、食品の製造及び提供されます企業様におかれましては、今後も最新のマニュアルに注意され、本マニュアルにできる限り準拠した上で、施設内で取り扱われる原材料の保管や施設内の衛生管理、並びに調理従事者等の健康管理の徹底を図られ、引き続き、食中毒の発生防止対策の強化を図られます様、切にお願い申し上げます。

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2017年7月6日木曜日

カット野菜及びカットフルーツ類の酵素的褐変と制御について


カット野菜及びカットフルーツ類の「酵素的褐変」
食品の褐変には、酵素の作用によって発生する「酵素的褐変」と、「非酵素(化学)的褐変」があります。リンゴやレタスをカットして放置しておくとカット断面が茶色や赤色に変化する現象が「酵素的褐変」であり、マグロの刺身や牛肉の色調が徐々に黒ずむ現象や、糖類の加熱によるカラメル化反応やメイラード反応が「非酵素(化学)的褐変」と呼ばれています。特に近年ではカット野菜やカットフルーツ類の需要が急増しており、これら製品の流通販売中に、「酵素的褐変」が発生すると、見栄えを著しく低下させてしまう為、この現象を如何に制御するのかが大きな課題となっています。
酵素的褐変の発生メカニズムは、野菜や果物に含まれるフェノール類(ポリフェノール)が、ポリフェノールオキシターゼ(フェノール類を酸化させる酵素)によって酸化され、キノン類を生成し、この酸化により生成されたキノン類が重合する事で、褐色色素を生成し、発生します。<図1>
尚、このフェノール類とポリフェノールオキシターゼは局在性があり、通常の生体内では接触する事がなく褐色反応は起こりません。但し、カットや潰すなどの調理加工を施したり、栽培中に虫や鳥が傷つける等によって、植物細胞が破壊され互いが接触し、褐変反応が始まります。<図2>
又、酵素的褐変は、リンゴのように直ぐに褐変する即時型と、カットレタスの様に褐変に数日掛かる遅延型が存在し、この違いは組織内のポリフェノール量に起因します。そのため遅行型のレタスでは、元々含有量の少ないポリフェノール類が保存期間中に新たに生合成され、これがポリフェノールオキシターゼの酸化力によって褐色します。
尚、野菜及び果物中に多く存在している基質は、カテキン類、クロロゲン酸類であり、アミノ酸であるチロシンも基質となります。
リンゴに含まれる主要なポリフェノールは、クロロゲン酸であり、200mg/100g程度存在している様です。又、レタスはクロロゲン酸の他にコーヒー酸と酒石酸がエステル結合したチコリ酸も多く含まれている様です。





カットレタスの褐変
カットレタスの保存期間中の褐変現象については、レタス中には、僅かしかポリフェノール類は存在していません。しかしながら、カット等処理することで、レタスが傷害誘導反応を起こし、酵素の活性が進んでしまいます。この活性した酵素により、ポリフェノール類が誘導的に合成され、この生成したポリフェノール類が、次々にポリフェノールオキシターゼによって酸化され、褐変反応が発生すると言われています。このためカットレタスの褐変現象には、新たなポリフェノール類の生合成が必要となります。この事から、カットレタスを含む遅延型の酵素的褐変を制御するためには、生合成されるポリフェノールを増やさない事が必要になります。


酵素的褐変の制御方法
この酵素的褐変を防止する方法として、<参考2>の様な手段があります。
但し、加熱するなど、野菜や果物をカットし、生のまま流通販売する製品類では導入する事そのものが非現実的な方法も多く、最終製品に適した手段を検討して頂く必要があります。


塩素酸化物による酵素失活作用
次亜塩素酸ナトリウムを始めとした塩素酸化物は、その酸化力により、タンパク質を変性させる力を持ち、多くの酵素はタンパク質を基に構成されているため、塩素酸化物による殺菌処理を施して頂く事で、同時に酵素活性を失活させる事ができます<図3>。但し、カットレタスの褐変反応の原因である酵素を失活させるために、単純に次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸水などの希釈液に浸漬処理するという方法では効果が得られにくく、ある一定の塩素濃度や接触時間が必要であり、その条件次第では塩素臭味の付着や、浸漬処理を行うことによる、葉の萎れやべたつき等と言う弊害も発生しやすくなるので、十分な注意が必要です。


まとめ
近年カット野菜やカットフルーツ類の需要が増加していますが、製品の流通販売中に酵素的褐変が発生し、見栄えを著しく低下させてしまう為、この現象を制御する事が一つの課題になっています。
 また、この酵素的褐変は、野菜や果物中に含まれているフェノール類が、カット処理などを行い植物細胞が破壊される事で、同じく野菜や果物中に含まれるポリフェノールオキシターゼ(酵素)と接触し、酸化する事で発生する現象であり、この褐変現象の制御方法として、「酵素を失活させる」、「酵素反応を抑える」、「酸素を除く」、「還元剤や酵素阻害剤を使用する」などの手段があります。
 しかしながら、カット野菜や果物に対して使用可能な手段として適切なものは少なく、これら最終製品に適した制御方法を選択して頂く必要があります。又、同時にカット野菜やカットフルーツ類の流通保存状況を考えた場合、微生物制御も考慮しておかなくてはなりません。
従いまして、今後は食品加工会社だけでなく、街の飲食店などもHACCPの導入が義務化され、ますますカット野菜やカットフルーツ類の需要が増加する可能性を秘めています。この事に伴い、遠方への販路拡大や賞味期限の延長などを検討される際の酵素的褐変を制御する手段の一つとして、塩素酸化物の酵素失活作用を利用した方法について、一度検討されてみられるのはいかがでしょうか?

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2017年6月21日水曜日

国内の食品流通加工業界における今後の農産物の調達基準について


GAPとは
スーパーなどで生鮮野菜や果物を購入する際、何を基準に選ばれていますか?国産品?農薬や化学肥料などを使わずに生産された有機JAS品?伝統的な方法で生産された地場の特産品ですか?その理由は様々だと思います。
その一方で、まだ馴染みが薄いのですが、海外のスーパーや飲食店、食品工場などでは、『GAP(Good Agricultural Practice)』という基準を農産物を仕入れる際に利用しています。尚、このGAP認証を受けている生産者や団体は世界各国に多数存在し、事実上の国際規格として利用されています。
そしてこのGAPは、適正農業規範または農業生産工程管理と訳され、農業生産現場において、食品安全、労働安全、環境保全、人権などを同時に達成しながら、持続可能な農業を実践していくことを求める国際認証であり、簡単に説明しますと、食品工場では既に当たり前になっているHACCP(危害分析重要管理点)の考え方や手法を、農業の現場に導入したものになります。


GAPの種類と国内の取得状況
現在、世界には様々な分類のGAPが存在していますが、その内、国内の生産者や団体等が取得しているGAPは<表1>の通りです。
また、農林水産省の調査では、国内のGAP導入状況は全体の62%がなんらかのGAPを導入しています。しかしながら、その内、グローバルマーケットで活用出来るGLOBAL.GAPは、世界124カ国、約16万件(平成28年1月現在)の認証取得件数がある一方で、国内での認証取得件数は340件(平成28年3月末現在)しかなく、主に青果物や日本茶等、海外へ輸出されている農産物で取得されているケースが多い様です。
この事から農林水産省としましても、官民一体となった農林水産物・食品の輸出促進を行う上で、輸出先となる国や事業者等から求められるGLOBAL.GAP等の認証取得を推進しており、又、同時に国際的な取引にも通用するGAPに関する規格・認証の仕組みの構築(日本発の輸出用GAP≒J.GAP)を進めています。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会の調達基準
なお、このGAPは2020年に開催されます、東京オリンピック・パラリンピック競技大会で選手やサポート・ボランティアスタッフ等に提供される食事の原材料の調達基準としても定められています。<図1>
このため、東京オリンピック・パラリンピック競技大会で、組織委員会から選定されたケータリング事業者に対して、生鮮野菜やその他加工品等を販売するとした場合、このGAP認証が取得されている事が必須事項として求められます。









GAPとGFIS(Global Food Safety Initiative) について
世界的に有名な飲食メーカーやスーパー等は、世界中から農産物を始めとする食材を調達しています。その際、調達する食品の安全性を確保することが重要になります。そこで、これらの企業はGFSI(世界食品安全イニシアチブ)という国際組織を作り、独自の規格基準を設け、その仕組みを提供しており、この際の代表的な制度の一つとしてもこのGAPは利用されています。また、GFSI(世界食品安全イニシアチブ)とは、世界各国の小売業・食品メーカーで構成されるTCGF(国際消費財流通組織)傘下の食品安全の推進母体であり、サプライチェーンを通じて食品の安全について協働し、知識を交換・共有し、グローバルスタンダードを策定しています。
なお、このGFISの承認を受けた認証制度は『GFIS承認スキーム』と呼ばれ、食品加工や農業などを対象にして、また、信頼に足る食品の安全の認証制度として、世界中で利用されています。
この事から、従来までは、仕入れ先を評価・管理・選別するためのスキームは、食品を取り扱う企業がそれぞれ任意に決めていましたが、今後は、GFIS承認スキームの認証であれば良い、もしくはGFIS承認スキームである事が最低条件になるという方向に向かっています。
しかも、GFISでは、評価の手順や基準を示したガイダンス・ドキュメント(全4部構成)を公表し、このスキームに基づき評価をしており、このガイダンスの中で、各分野の内、A(畜産物、水産物の生産)、B(植物、穀類、豆類の生産)、D(植物性食品、ナッツ類、穀類の前処理)、E(要冷蔵生鮮食品の処理)及びL(化学物質、生化学物質の製造)についてマネジメント、生産工程管理(GAP及びGMP)、HACCPに関する要求事項等が示されています。
まとめ
GAP認証制度は、日本国内ではまだ馴染みが薄いのですが、世界的に見ますと欧州を中心に、大手小売業者等と取引を行う為の国際基準(≒GLOBAL. GAP)として認識されており、この取組はGFSIという食品の安全性を考える国際的な構想における具体的な手法の一つとして位置づけられています。
また、日本政府も官民一体となった農林水産物・食品の輸出を促進する上で、HACCP、ハラール、GLOBAL.GAP等の認証取得を推進しており、これは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会で提供される食事の原材料の調達基準にも必須事項として盛り込まれています。
しかし、今は農産物や食品の海外輸出を行う際の取引条件という認識が強く、これらの認証制度は、東京オリパラ大会以降、国内の食品加工流通業者にとっても、農産物を仕入れる際の取引条件として要求される可能性が高くなる事は必至です。また、水産物やその他の食品についても同様の認証基準が求められていく事も予測されます。
従いまして、今後は自社工場におけるHACCP認証だけでなく、仕入れ基準としてのGAP認証や、ハラール認証などに関する取組を進められ、世界的な食品の安全基準を満たした加工食品やサービスの提供を検討されてみられては如何でしょうか。

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2017年3月29日水曜日

生食用鮮魚介類、生食用かき及び冷凍食品(生食用)の加工基準の改正

生食用鮮魚介類の加工基準改正の経緯
近年、生食用鮮魚介類の加工基準の改正が進んでいますが、この加工基準は、「食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について」という厚生労働省告示によって法制化されており、その始まりは昭和46年と意外に古く、その当時は鮮魚介類には化学合成品たる添加物はいかなる理由があっても使用してはならないと定めていましたが、近年の食品の多様性を考慮し、殺菌を目的とする場合に限り、その安全性が確認出来た食品添加物については加工基準の中に取り入れていくという方向性が生まれ、平成13年からは殺菌を目的とした場合に限り、次亜塩素酸ナトリウムが生食用鮮魚介類に使用することができるようになり、これによって衛生基準を満たすことができるようになりました。
さらに平成28年には2回改正され、生食用鮮魚介類への直接殺菌剤として、亜塩素酸水、次亜塩素酸水などの新しい殺菌技術が追加されました。<表1>


加工基準における原料用鮮魚介類に対する添加物の使用について
生食用鮮魚介類の加工基準の中には、“原料用鮮魚介類”という表現があり、平成13年厚生労働省告示第213号において、「第213号における生食用鮮魚介類の加工基準中の(5)の処理を行っていない鮮魚介類については、化学的合成品たる添加物の使用規定は適用されないこと。」という記述があります。
またこれは、生食用鮮魚介類として加工される以前の鮮魚介類については、化学合成品たる添加物の使用を妨げるものではないという事でもあり、原料用鮮魚介類の段階では、衛生基準を満たすため、いわゆる殺菌を目的としている場合、化学合成品たる添加物を使用できるという事になります。
但し、食品添加物の使用基準と、最終製品において、消費者誤認を招くような欺瞞的使用方法は、添加物本来の目的とは異なる為、認められていないことは大前提となります。

生食用鮮魚介類を原料にした場合の加工基準
生食用鮮魚介類は、原料用鮮魚介類に殺菌処理を施すことによって衛生的な状態となった最終製品であり、生食用鮮魚介類を原料として購入し、再度、生食用鮮魚介類に加工した場合、その取り扱いには十分な注意が必要となります。
特に、海外でフィレ加工した生食用鮮魚介類を原料として輸入し、これを国内で生食用鮮魚介類として再加工した場合、原料用鮮魚介類とは認められず、この原料は生食用鮮魚介類の加工基準が適用済みの状態となり、化学合成品たる添加物を使用することはできません。<表2>
これは、そもそも生食用鮮魚介類に加工された段階で、すでに衛生基準が満たされているはずであるという考えが根底にあるからです。

生食用鮮魚介類とその対象業者
最終製品として市場流通される生食用鮮魚介類は、一般に消費者が加熱せず、そのまま摂取する事が前提であり、軽度な加工が施されるもの(刺身、すし、和え物、酢の物)だけはこの中に含まれています。また、対象業者としましては、魚介類せり売業者、仲買業者、魚介類販売業者、製造加工業者、 および一部の飲食店営業者であり、製造加工業者としては、むき身業者、ゆで貝、 ゆでたこ、ゆでいか、ゆでかに、ゆでえび等の製造加工業者、生節の製造業者、生しらすの製造業者と、一部の飲食店営業者であり、この一部の飲食店営業者には、すし屋及び刺身等を作る料理店が含まれていますので、やはり最終製品となる生食用鮮魚介類を消費者へ提供する業者が対象であるということはわかっていただけるのではないでしょうか?
また、冷凍食品(生食用鮮魚介類に限る。)及び生食用かき(生食用鮮魚介類等)についても生食用鮮魚介類と同様に改正されており、<表3>このように、生食される鮮魚介類については、全体的に改正され、最終消費者に対する食の安全性を確保する為に、衛生基準を担保するという点が、より強調された結果だと言えるのではないでしょうか?

まとめ
これまで、漁港に併設されていた加工場では処理水に海水を直接使用していましたが、この海水を殺菌し、飲用適の食品製造用水を用いることにした平成13年の加工基準大幅改正により、これ以降、腸炎ビブリオによる食中毒は激減することとなり、これは国内企業の衛生管理基準の強化による賜物であると捉えられています。
しかし、海外で加工されたものも生食用鮮魚介類であり、これを国内で二次加工して生食用鮮魚介類として商品化する際には、すでに加工基準が適用済みであることをご存知ではない方も多く、今や、コンビニでも寿司が販売されている時代であります。今回、改正されました食品衛生法につきましては、再確認していただきますと共に、安全な鮮魚介類が正しく流通されることを望んでやみません。


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2017年3月16日木曜日

アブラナ科野菜類のワックス成分の 除去と殺菌効果の助長について


アブラナ科野菜の水はじきと界面活性剤

アブラナ科の野菜類や(キャベツ、ブロッコリー、水菜等)、パクチー、大麦若葉等の野菜類は、ロウ質であるワックス成分(ワックスブルーム)を生成する事で、乾燥や低温や太陽光線(直射日光)、更には害虫等からその身を守っています。そのため、このロウ質によって、野菜表面の水はじきが強くなるという特徴を持ち、洗浄効果や殺菌効果が得られづらく、このことがカット野菜を加工する上での課題の一つとして挙げられます。しかし、これら野菜類を加工する上で、中性洗剤を用いて洗浄することで虫を取り、汚れを除去していますが、この中性洗剤を構成している界面活性剤には、水になじむ成分(親水基)と、油になじむ成分(親油基または疎水基)があり、この成分によって4つに分類されます。
<図1>そして、このアブラナ科の野菜類を殺菌するためには、この表面に付着しているワックス成分を除去し、水はじきを解消しなければ如何なる殺菌剤の効果も半減してしまいます。では、どのような洗剤を使用すれば殺菌しやすくなるのでしょうか?そこで色々と調べてみましたが、そのような角度で検証されたデータはなく、また知見も少なく、アブラナ科野菜類を殺菌するために適している前処理洗浄剤を、野菜表面に付着している微生物を除去し、殺菌するという観点から検証されたことは、どうも無いようです。そこで、この度この観点に立って検証試験を実施してみる事にしました。


市販洗剤に見る界面活性剤の配合割合
市販で購入できる家庭用洗剤を例に取りますと、複数の界面活性剤が配合されており、これらの用途は主として食器洗いであり、泡立ちの良いアニオン系のものから、昨今では泡切れを調整することができ、水質に左右されないノニオン系の配合比率が高まっているようです。その中でも代表的な市販洗剤<図2>の洗浄効果と殺菌効果を検証してみることにしました。
まず、各市販洗剤の特徴を確認するために、ラー油とごま油を混ぜ合わせたものを水に浮かべてから、ここに市販洗剤を滴下させますと油の乳化・分散・可溶化を比較することができます。そこで、この性質を用いてその効果を確認してみましたところ、以下<図3>のようになり、市販洗剤によっても、各種界面活性剤の組み合わせによっても、その効果が異なるということがわかりました。
また、この市販洗剤の中には、野菜・果実を洗浄(5分間)するという使用方法が用途として記されていないものもありますが、アブラナ科のようなワックス成分で覆われた野菜類を洗浄し、その後殺菌するとした場合、どのタイプの界面活性剤を用いて前処理した方が良いのかを確認してみる為に、4つの市販洗剤を用いて、水菜(アブラナ科)を洗浄してみました。
























水菜(アブラナ科)における洗浄と殺菌効果
水菜はカット野菜の中でも常在菌数が高く、しかも水はじきが強いため、殺菌しづらい野菜類の1つですが、前述の4つの市販洗剤を用いて5分間洗浄し、その後殺菌処理した後の菌数を確認してみましたところ<図4>、市販洗剤による洗浄後の菌数差はさほど無く、その後、殺菌処理を施しますと、菌数結果に違いが見られ、C社から発売されています、製品3、製品4では、一般生菌数、大腸菌群数ともに、殺菌効果が明確にみられています。
また、殺菌直後の水菜中の残留塩素を測定してみましたところ、水道水で洗浄したものと、各種市販洗剤で処理したものとの間には大きな差は見られず<図5>この事は、洗浄することでワックス成分が除去され、水菜に殺菌液の有効成分が浸透したからではなく、表面のワックス成分を除去することで、水菜の水はじきが無くなり、水菜の表面にのみ付着している微生物に対する殺菌効果が強まったからではないかと考えられ、やはり水菜の常在細菌の多くは表面に付着しているという事がわかりました。


まとめ
水菜、キャベツなどのアブラナ科の野菜の表面にはワックス成分があり、洗浄水や殺菌剤を自らはじいてしまうことでその殺菌効果が得られづらいという特徴があります。
そこで、これらアブラナ科の野菜類のワックス成分を除去する為には、実際には洗剤で前処理した方が良いのかどうかを、一般的によく知られている家庭用の洗剤を用いて確認してみました。
その結果、前処理洗浄はとても効果的であるということがわかり、また、この前処理に用いる洗剤としましては、アニオン系の界面活性剤100%で構成されている製品が最も効果的であり、次に、アニオン系の界面活性剤の配合量が多い製品の結果が良く、アニオン系の配合量が多い洗剤の方が殺菌助長効果が強い様です。
ただしその一方で、ノニオン系を中心とした泡切れの良さを特徴としている製品の方は、ワックス成分除去効果も、殺菌助長効果も得られづらいという事がわかりました。しかし、アニオン系の配合が多すぎますと、泡立ちが強く、洗剤成分を洗い流すための水洗い回数が多くなり、手間が増える可能性があり、カット野菜工場の自動洗浄ラインでは泡が残り、作業性が悪化する懸念があります。
以上のことから、レタス等は、野菜表面にワックス成分が少ないので、虫取り程度の軽度の洗浄で良く、泡立ちが少ないノニオン系の洗剤で処理してもなんら問題はありません。しかしながら、アブラナ科の野菜類や、水をはじきやすい野菜類や、浸透性の悪い野菜類の場合には、アニオン系を中心としながらノニオン系の界面活性剤をバランス良く配合し、ワックス成分の除去と、現場での泡切れの良さの両面に配慮している洗剤を用いなければ、これら野菜類に付着している微生物類を効率よく除去し、殺菌する事はできないという事なのです。
そして、これらの野菜類を処理する場合には、前処理洗浄はとても重要であり、泡切れの良さを求めるだけでなく、古典的ではありますが、アニオン系の効果を中心とし、ノニオン系の界面活性剤がバランス良く配合されている洗剤で前処理しておくことこそ、この後、殺菌しやすくなるという、とても賢い使い方だという事がわかりました。是非皆様も試してみて下さい。

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日本と米国の食品添加物の規制 (ポジティブリスト)の違いについて


米国における食品に直接添加できる物質

米国では食品に直接添加できる物質は、食品添加物、GRAS物質、着色料の3つに区分けされており<図1>特に食品添加物は、ポジティブリスト制を採用しており、アメリカ食品医薬品局(以下FDA)において、21 CFR(Code of Federal Regulations)のPart 172、Part173で定められています。また、食品添加物の定義外であるGRAS物質も、一般に安全であると認められているものとして広く公開されていますが、この米国で認められている食品添加物やGRAS物質と、日本で認められている物質は同一ではなく、両国において加工食品を輸出入する際には混乱を招くことが多々あります。なお、米国では1958年から、食品添加物のポジティブリスト制度を導入しましたが、これまで使用されてきた食品添加物の取り扱いをどうするかという議論が発生し、安全で毒性の無いものについては、GRAS物質として再び登録することとし、その後、再評価することによって、GRAS確認済物質というステータスとして登録することにし、ポジティブリスト化したようです。このことは日本国でも同様であり、日本の食品添加物の分類も米国のGRAS物質と同じく既存添加物として位置づけられています。また、米国、日本国のいずれにおいてもこのポジティブリストにないものについては、当然のことながら食品に使用することはできません。なお、米国ではGRAS物質の中からネガティブリストに移された物質(デラニー条項として)も存在する他、日本国でも順次食品安全委員会において再評価されています。


ポジティブリスト/ネガティブリスト
米国における食品に直接添加可能なポジティブリスト対象物質は<図2>の通りであり、21CFR Part172、173と、21CFR Part182、184、FDAに掲載されているGRAS物質の3本柱であると言えます。

米国、日本国の調味料(アミノ酸)の登録状況例21CFR Part172には、食品に直接添加可能な食品添加物が掲載されていますが、日本でも食品添加物登録が多いアミノ酸については以下の通りであり、日本で認められているもの、米国で認められているものとに分けられ、その登録の状況についてまとめてみますと、<図3>まず、21CFR Part172にアミノ酸として登録されている食品添加物は22品あり、これらは、日本国でも全て食品添加物として認められています。しかし、全体的な傾向としましては、FDAにおいてはアミノ酸などの食品評価は終了しており、食品添加物として掲載が完了している状況でありますが、日本国では、既存添加物と指定添加物が混在している状況のままです。しかも、日本国の既存添加物については、米国ではGRAS物質という立ち位置になりますが、古来から日本で慣例的に使用されてきた物質についてはGRAS掲載されている可能性はほとんど無く、申請しなければ、当然GRAS物質になることも、GRAS確認物質になることも無いと言えます。また、日本では調味料として使用されている「DL-アラニン」は、米国ではピクルス製造時の製造塩水に対するフレーバー剤としての用途に限定されており、この様にFDAでは、添加物を登録するだけで無く、一部に詳細な用途や使用方法を限定し、濃度、使用方法も規定しているものが多々あります。その一方で、日本国では、古くから登録されている物質であればあるほど物質名と用途を記載しているだけのものが多く、一般的な調味料として使用しているものが、米国では調味料として広く使用することが出来ない場合も多々あります。そこで、日本でも2003年7月以降、食品安全委員会が設置され、食品の安全行政が進んでいますが、中でも指定時期が古い物質については、十分に注意して使用する必要があるといえます。

まとめ

米国と日本における食品添加物の規制についてはポジティブリストを作成するという考え方は同じなのですが、登録されている状況は、若干の違いが見られます。また、日本国内で食品加工する場合には、日本国の添加物法規に従い製造することになりますが、そうして製造された加工食品を、海外へ輸出する、あるいは、海外で製造された加工食品を、日本国内へ輸入する場合には、どのような食品添加物を用いて製造されたのかということを十分に把握しておく必要があります。特に昨今は書類申請中に記載する事項も増えており、通関時などで、シップバックされる対象になる可能性も多く、現在の食品加工は、既に多国籍加工の時代に突入しており、原料と、加工地と、消費地は、別々の場所であることの方が多く、そのため、消費地における法令を確認しながら、加工地の法令に遵守して製造しなければならないという意識を持たなければならないということではないでしょうか?


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